FPVドローンを始めようとすると、「アマチュア無線免許が必要らしい」「4アマを取れば5.8GHzのVTXを使えるらしい」といった情報を目にします。ただ、ここで最初に押さえたいのは、アマチュア無線技士の資格を取ることと、FPV用VTXを使える状態にすることは同じではないという点です。
趣味で5.8GHz帯のFPV映像伝送を使う場合、一般的には第四級アマチュア無線技士、いわゆる4アマの取得が入口になります。しかし、資格を取っただけでは電波を出せません。VTXなどの無線設備を含めたアマチュア局の免許、必要に応じたJARDの基本保証、使用できる周波数や機材の確認まで進めて、はじめて合法運用に近づきます。
この記事では、2026年6月時点の公式情報をもとに、FPVドローンでアマチュア無線免許が必要になるケース、4アマの取得方法、無線従事者免許申請、VTXの開局申請、業務利用の注意点、ドローン側の航空法手続きまでを初心者向けに整理します。
FPVドローンでアマチュア無線免許が必要になるケース
FPVドローンでアマチュア無線免許が話題になるのは、主にレース用・自作機・マイクロドローンなどで使われる映像送信機、いわゆるVTXが関係するためです。とくに5.8GHz帯のアナログ映像伝送を使う場合、機材や運用目的によってアマチュア無線の資格とアマチュア局免許が必要になることがあります。
JARDは、FPVドローンをアマチュア無線で利用する場合には、アマチュア無線技士の資格とアマチュア無線局免許が必要だと案内しています。さらに、ドローン等で使われるVTXの多くは海外製で、日本のアマチュア無線局では認められていない周波数を発射する機種が多い点にも注意を促しています。参考:JARD「ドローン FPV の免許/増設の手続き」
一方で、すべてのFPVドローンに4アマが必要という意味ではありません。たとえば、技術基準適合証明等を受けた2.4GHz帯などの無線設備を、製品の仕様どおりに使うタイプの機体では、ユーザーが個別にアマチュア局を開局しないケースもあります。重要なのは、機体名ではなく、どの周波数の、どの無線設備を、どの目的で使うのかを確認することです。

まず理解すべき「無線従事者免許」と「無線局免許」の違い
初心者が最も混乱しやすいのが、アマチュア無線技士の免許と、アマチュア局の免許の違いです。名前は似ていますが、役割はまったく別です。
| 区分 | 意味 | FPVとの関係 |
|---|---|---|
| 無線従事者免許 | 人に与えられる資格。第四級アマチュア無線技士など | VTXなどをアマチュア無線として操作するための入口 |
| 無線局免許 | 無線設備と運用条件に対して与えられる免許 | 使うVTXや送信機を含めて開局・変更手続きが必要 |
| コールサイン | アマチュア局に割り当てられる識別信号 | 局免許が付与されると運用時の識別に使う |
つまり、4アマに合格して無線従事者免許証を受け取っても、その時点では「資格を持つ人」になっただけです。実際にFPV用VTXから電波を出すには、VTXを含む無線設備について、アマチュア局の開局申請または変更申請を進める必要があります。
この違いを知らないまま機材を購入すると、「免許は取ったのに、買ったVTXがそのまま申請できない」「日本で使えないチャンネルが出せる機種だった」「保証に必要な資料が揃わない」というつまずきが起きやすくなります。
初心者は第四級アマチュア無線技士からでよい?
趣味のFPVドローンで5.8GHz帯の映像伝送を始める場合、まず候補になるのが第四級アマチュア無線技士です。4アマはアマチュア無線資格の入門資格で、法規と無線工学の基礎を学びます。日本無線協会の国家試験、またはJARDなどの養成課程講習会を通じて取得できます。
ただし、4アマで扱える範囲、使用できる周波数、送信出力、実際のVTXの仕様は必ず一致させる必要があります。機材によっては第三級アマチュア無線技士以上を検討する人もいますが、初心者が最初に理解すべきなのは「級を上げれば何でも使える」ではなく、「使う無線設備と運用目的に合った資格・局免許を確認する」という考え方です。
4アマの取得方法は国家試験と養成課程講習会の2つ
第四級アマチュア無線技士を取得する主な方法は、国家試験を受ける方法と、養成課程講習会を修了する方法です。どちらが正解というより、費用、日程、学習スタイルで選ぶのが現実的です。
国家試験で取得する方法
日本無線協会は、第三級・第四級アマチュア無線技士など一部資格について、全国のテストセンターでコンピューターを使うCBT方式の国家試験を年間を通して実施すると案内しています。受験資格は問われないため、これからアマチュア無線を始める人でも受験できます。参考:日本無線協会「国家試験 受験案内」
- 費用を抑えやすい
- 自分のペースで過去問中心に勉強できる
- CBT会場を選びやすい地域なら日程調整しやすい
- 独学が苦手な人は学習計画を立てる必要がある
出題範囲は大きく法規と無線工学です。FPV目的であっても、試験はFPV専用ではありません。電波法、無線局の運用、電波の基礎、アンテナ、送受信機など、アマチュア無線全体の基本を学ぶものだと考えましょう。
養成課程講習会で取得する方法
JARDは、総務省認定のアマチュア無線技士養成課程講習会を実施しており、第四級標準コースでは集合形式の講習を受け、修了試験に合格すると国家試験免除で資格を取得できると案内しています。参考:JARD「養成課程講習会 第四級/第三級アマチュア無線技士」
- 講師の説明を受けながら学べる
- 独学に不安がある人でも進めやすい
- 講習日程と会場に合わせる必要がある
- 国家試験より費用は高くなりやすい
JARDの案内では、2025年9月20日以降開講の第四級標準コースは一般26,250円、18歳以下14,150円とされています。料金や制度は改定されることがあるため、申込前に必ず公式ページで最新情報を確認してください。
4アマ合格後に必要な無線従事者免許申請
国家試験に合格した、または養成課程講習会の修了試験に合格しただけでは、まだ無線従事者免許証は手元にありません。合格後は、総務省の案内に従って無線従事者免許申請を行い、免許証の交付を受けます。
申請には、申請書、写真、氏名・住所等の情報、手数料などが関係します。手数料や様式は変更されることがあるため、最新の手続きは総務省の電波利用ホームページで確認しましょう。参考:総務省「無線従事者免許申請書」
この段階で手に入るのは、あくまで「無線従事者免許」です。FPV用VTXを運用するには、次にアマチュア局の開局申請、または既存局への増設・変更申請へ進みます。

FPV用VTXを使うためのアマチュア局開局申請
FPVドローンで5.8GHz帯のVTXをアマチュア無線として使う場合、無線従事者免許を取得した後、アマチュア局の免許申請を行います。すでにアマチュア局を持っている人がVTXを追加する場合は、開局ではなく変更申請・届出になることがあります。
JARDのFPVドローン向けページでは、新規開設時の必要書類として、無線局免許申請書、アマチュア局の無線設備の開設保証願書、送信機系統図、二次業務の周波数の使用に当たっての確認書などが案内されています。変更時にも、変更申請書・工事設計書、変更保証願書、送信機系統図などが関係します。
JARD基本保証とは
海外製VTXなど、技術基準適合証明を受けた国内向け無線設備としてそのまま扱いにくい機材では、保証認定が重要になります。JARDは、国内でアマチュア無線局として免許を受けるには、VTXの取扱説明書などを参考に適切に改造し、JARDの基本保証を利用する必要があると案内しています。
同ページでは、保証料について1台のみの場合は5,500円、複数台を同時に申し込む場合は1台目5,500円、2台目から1台あたり1,100円と案内されています。また、書類提出後のJARD審査は保証料の入金確認後、順番に実施され、審査完了まで2〜4週間程度、その後に管轄の総合通信局での審査を経て免許事項証明書が発給される流れが説明されています。料金や期間は変わる可能性があるため、申請前に公式情報を確認してください。
VTX購入前に確認すべきポイント
FPV機材は海外通販で手軽に買えますが、日本でそのまま使えるとは限りません。とくにVTXは、購入後ではなく購入前に確認するのが鉄則です。
- 日本のアマチュア無線で使える周波数・チャンネルに設定できるか
- 不要な周波数を発射しないように改造・設定できるか
- 送信出力が申請内容や資格の範囲と合っているか
- 送信機系統図など、申請に必要な資料を入手できるか
- JARDの保証実績や販売店の案内があるか
- 技適や保証の対象として扱える機材か
「FPV用」「5.8GHz対応」と書かれていても、日本の制度に合っているとは限りません。海外製VTXは、海外のレース環境や規制を前提に作られていることが多く、日本では使えない周波数を発射できる機種もあります。安さだけで選ぶと、保証や申請の段階で詰まることがあります。
アマチュア無線でやってはいけないこと
FPVドローンとアマチュア無線を結びつけるときに、必ず理解しておきたいのが用途の制限です。アマチュア無線は、金銭上の利益を目的としない自己訓練、通信、技術的研究などのための制度です。業務、案件撮影、商用空撮、サービス提供、広告・納品を前提にした映像伝送を、アマチュア無線の枠組みで行ってよいとは考えないでください。
仕事でFPV映像伝送を使う場合は、アマチュア無線ではなく、業務用の無線システムや別の無線資格・無線局免許が関係する可能性があります。たとえば産業用途の画像伝送では、陸上特殊無線技士や登録局・免許局の制度を確認する場面があります。用途が少しでも業務寄りなら、販売店、JARD、総合通信局などに確認してから機材選定を進めるのが安全です。
ドローン側の航空法手続きも別に必要
アマチュア無線免許は、あくまで電波法上の手続きです。ドローンを飛ばすための航空法上の手続きとは別です。国土交通省は、無人航空機の飛行ルール、機体登録、飛行許可・承認申請、操縦者技能証明などの情報を公開しています。参考:国土交通省「無人航空機の飛行ルール」
FPV飛行で特に注意したいのは目視外飛行です。国土交通省の飛行許可・承認申請ポータルでは、夜間飛行、目視外飛行、人または物件と距離を確保できない飛行、催し場所上空での飛行、危険物輸送、物件投下などが特定飛行に該当すると整理されています。参考:国土交通省「無人航空機 飛行許可・承認申請ポータルサイト」
FPVゴーグルを見て操縦する場合、操縦者が機体を直接目で見続けていないため、目視外飛行に該当し得ます。100g以上の機体登録、飛行場所、DIPS2.0での飛行許可・承認、補助者の配置、立入管理措置などは、無線免許とは別に確認しましょう。

取得から運用開始までの手順
初心者は、次の順番で進めると混乱しにくくなります。
- 使いたいFPVドローンとVTXの周波数・出力・技適・保証可否を確認する
- 趣味のアマチュア無線運用でよい用途か確認する
- 第四級アマチュア無線技士の取得方法を選ぶ
- 国家試験または養成課程講習会で合格する
- 無線従事者免許申請を行い、免許証を受け取る
- VTXの資料、送信機系統図、周波数確認などを揃える
- JARD基本保証を利用してアマチュア局の開局・変更手続きを進める
- アマチュア局免許、コールサイン、運用条件を確認する
- ドローン側の機体登録、飛行許可・承認、飛行場所のルールを確認する
- ログや運用ルールを守り、安全な場所で練習を始める
この流れで大事なのは、免許取得と機材購入の順番です。先にVTXを買ってから制度に合わせようとすると、使えない機材を抱える可能性があります。できれば、申請実績のある機材、販売店が送信機系統図を用意している機材、JARDの保証情報を確認しやすい機材から選びましょう。
初心者が間違えやすいポイント
4アマを取ればすぐ5.8GHz VTXを使えると思ってしまう
4アマは人の資格です。VTXを実際に電波送信するには、アマチュア局の免許と、使う無線設備の申請・保証が必要です。
海外製VTXをそのまま使えると思ってしまう
海外製VTXは、日本で認められていない周波数を発射できることがあります。日本向けの設定、改造、保証、申請資料の確認が必要です。
仕事の撮影にもアマチュア無線を使えると思ってしまう
アマチュア無線は営利・業務目的の通信に使う制度ではありません。業務利用では別の無線制度を確認してください。
ドローンの飛行許可と無線免許を混同してしまう
無線免許は電波の手続きです。航空法上の機体登録、飛行禁止空域、目視外飛行、DIPS2.0での許可・承認は別に確認が必要です。
よくある質問
FPVドローンは必ずアマチュア無線免許が必要ですか?
必ずではありません。必要性は、使う周波数、無線設備、技適の有無、運用目的によって変わります。5.8GHz帯のVTXをアマチュア無線として使う場合は、アマチュア無線技士の資格とアマチュア局免許が必要になると考えて確認してください。
4アマだけ取ればすぐ5.8GHz VTXを使えますか?
使えません。4アマは無線従事者免許であり、人の資格です。VTXを含む無線設備についてアマチュア局の開局申請または変更申請を行い、免許を受ける必要があります。
国家試験と講習会はどちらがおすすめですか?
費用を抑えたい、自分で過去問学習できる人は国家試験が向いています。独学が不安で、講師の説明を受けながら進めたい人は養成課程講習会が向いています。日程と費用は公式サイトで最新情報を確認してください。
海外通販の5.8GHz VTXは日本で使えますか?
そのまま使えるとは限りません。日本で認められていない周波数を発射できる機種もあるため、周波数、出力、改造可否、送信機系統図、JARD保証の可否を購入前に確認してください。
仕事のFPV空撮でアマチュア無線を使えますか?
原則として避けるべきです。アマチュア無線は金銭上の利益を目的としない用途の制度です。業務や案件撮影でFPV映像伝送を使う場合は、業務用の無線制度や必要資格を別途確認してください。
100g未満のドローンでも電波の免許は必要ですか?
機体重量と電波の手続きは別です。100g未満で航空法上の無人航空機に該当しない場合でも、5.8GHz帯VTXなどの無線設備を使うなら電波法上の確認が必要です。
ドローン国家資格があればアマチュア無線免許は不要ですか?
不要になるわけではありません。無人航空機操縦者技能証明は航空法上の操縦者資格で、アマチュア無線技士や無線局免許は電波法上の手続きです。別制度として確認してください。
まとめ:FPVは「4アマ取得」より手続き順の理解が大切
FPVドローンでアマチュア無線免許が必要かどうかは、使うVTX、周波数、用途によって変わります。趣味の5.8GHz FPVでは第四級アマチュア無線技士が入口になりやすい一方、資格取得だけで運用開始できるわけではありません。
正しい順番は、機材と用途を確認し、4アマを取得し、無線従事者免許証を受け取り、VTXを含めたアマチュア局の開局・変更手続きを進め、さらにドローン側の航空法ルールを確認することです。特に海外製VTX、業務利用、目視外飛行は誤解が大きい部分なので、公式情報を確認しながら慎重に進めましょう。
迷ったときは「免許を取ったか」ではなく、「そのVTXを、その周波数で、その目的に使うことが、自分の局免許と航空法上の条件に合っているか」を確認するのが近道です。

